2016年の大統領選は、私がアメリカで観察する5回目の選挙となる。毎回選挙の度に感じてきたのは、一見公明正大に行われている米大統領選に垣間見る、アメリカの民主主義の根幹にある陰と光である。今回ほど、それを顕著に感じる選挙はない。
米大統領選といえば、従来は「リベラル・民主党」対「保守・共和党」という構図が支配的であった。ところが、今年は予備選が始まった当初から、「エスタブリッシュメント*」対「反エスタブリッシュメント」という構図が明確となった。
*エスタブリッシュメント: 二大政党、スーパーPAC(政治資金団体)、PACに莫大な政治資金を寄付する巨大企業、金融資本、軍需産業、大手メディアなどで構成される広義の権力機構をさす
長丁場の選挙戦、候補者の暴言やスキャンダルの応酬に辟易し、目を逸らせてしまう有権者も多いかもしれない。しかし、「エスタブリッシュメントが押すクリントン」対「反エスタブリッシュメントが押すトランプ」の闘いの本質を考えると、今回の選挙はアメリカ現代史上前代未聞の、ある意味革命的な選挙戦だといっていい。そして、この動きは、今回限りでは終わらないかも知れない。
民主党予備選で、バーニー・サンダースがヒラリー・クリントンを追い詰めたことや、全く本命視されていたなかったドナルド・トランプが共和党予備選を勝ちあがり、本選を互角に戦う事態となったのは、有権者の多くがエスタブリッシュメントが支配する既存の政治システムに諸悪の根源があることに気付いたからだった。
これまで二大政党政治が、いかに1%の特権階級を優遇し、99%の国民の利益を奪ってきたかに気付き、既成の政治にNOを突きつけたからだった。二大政党政治は、民主・共和のどちらが政権を担っても、エスタブリッシュメントが操る国家の根幹システムと世界の軍事戦略には大きな違いがないということに、米国民の多くが気付き怒りの声を上げた、そういう意味で革命的な選挙戦である。
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