2017年01月15日

安倍氏真珠湾訪問に思う、和解の力の使い道


2016年12月28日、安倍総理大臣はハワイ真珠湾を訪問し、オバマ大統領とともに、真珠湾攻撃の犠牲者を慰霊した。日本の首相として現職アメリカ大統領とともに慰霊するのは初めてだとする歴史的意義がメディアで盛んに強調された。

「オバマ大統領、アメリカ国民の皆さん、世界のさまざまな国の皆さま。私は日本国総理大臣として、この地で命を落とした人々の御霊にここから始まった戦いが奪った、すべての勇者たちの命に、戦争の犠牲となった数知れぬ無辜の民の魂に、永劫の、哀悼の誠を捧げます。」と、安倍首相はこのように述べた。

先立つ2016年5月、オバマ大統領が広島を訪問し、原爆で犠牲者への哀悼と核なき世界への決意を表した。今回の安倍首相の真珠湾訪問は、オバマ大統領への感謝と敬意を表し、お返しをした形ともなった。

「戦争の惨禍は、二度と、繰り返してはならない。私たちは、そう誓いました。そして戦後、自由で民主的な国を創り上げ、法の支配を重んじ、ひたすら、不戦の誓いを貫いてまいりました。戦後70年間に及ぶ平和国家としての歩みに、私たち日本人は、静かな誇りを感じながら、この不動の方針を、これからも貫いてまいります。」

「あのパールハーバーから75年。歴史に残る激しい戦争を戦った日本と米国は、歴史にまれな深く、強く結ばれた同盟国となりました。それは、いままでにもまして、世界を覆う幾多の困難にともに立ち向かう同盟です。明日を拓く、希望の同盟です。私たちを結びつけたものは、寛容の心がもたらした、The power of reconciliation. “和解の力”です。」

安倍首相はこのような言葉で、日本が不戦の誓いを貫く決意を示すとともに、日米の和解と友好を強調し、未来に向けての強固な同盟関係を再確認した。

戦後の日本の繁栄がアメリカの人々の寛容さのお陰であることは紛れもない。そして、日米の市民同士が憎しみや困難を乗り越えて、互いに和解し友好関係を再構築できたことには、人の懐の深さと、平和を愛する気持ちは世界共通なのだいうことを、あらためて実感させられる。

しかし、真珠湾攻撃から75年という区切りの年であるとはいえ、「和解の力」を強調したことはピントがずれていたと言わざるを得ない。なぜなら、日米間においては、「和解」は“Issue=問題点”ではない−正確に言えば、政治的な意味では日米間には「和解」問題は存在しないからだ。


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2016年10月28日

米大統領選にみるアメリカの民主主義の陰と光

アメリカ大統領選挙が目前に迫った。
 
2016
年の大統領選は、私がアメリカで観察する5回目の選挙となる。毎回選挙の度に感じてきたのは、一見公明正大に行われている米大統領選に垣間見る、アメリカの民主主義の根幹にある陰と光である。今回ほど、それを顕著に感じる選挙はない。
 
米大統領選といえば、従来は「リベラル・民主党」対「保守・共和党」という構図が支配的であった。ところが、今年は予備選が始まった当初から、「エスタブリッシュメント*」対「反エスタブリッシュメント」という構図が明確となった。

*
エスタブリッシュメント: 二大政党、スーパーPAC(政治資金団体)、PACに莫大な政治資金を寄付する巨大企業、金融資本、軍需産業、大手メディアなどで構成される広義の権力機構をさす
 
長丁場の選挙戦、候補者の暴言やスキャンダルの応酬に辟易し、目を逸らせてしまう有権者も多いかもしれない。しかし、「エスタブリッシュメントが押すクリントン」対「反エスタブリッシュメントが押すトランプ」の闘いの本質を考えると、今回の選挙はアメリカ現代史上前代未聞の、ある意味革命的な選挙戦だといっていい。そして、この動きは、今回限りでは終わらないかも知れない。
 
民主党予備選で、バーニー・サンダースがヒラリー・クリントンを追い詰めたことや、全く本命視されていたなかったドナルド・トランプが共和党予備選を勝ちあがり、本選を互角に戦う事態となったのは、有権者の多くがエスタブリッシュメントが支配する既存の政治システムに諸悪の根源があることに気付いたからだった。
 
これまで二大政党政治が、いかに1%の特権階級を優遇し、99%の国民の利益を奪ってきたかに気付き、既成の政治にNOを突きつけたからだった。二大政党政治は、民主・共和のどちらが政権を担っても、エスタブリッシュメントが操る国家の根幹システムと世界の軍事戦略には大きな違いがないということに、米国民の多くが気付き怒りの声を上げた、そういう意味で革命的な選挙戦である。
 
ただし、これが既存の政治システムを打ち破る真の革命になるのか、それは定かではない。先行きはいまだ混沌としている。
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2016年08月10日

“お気持ち”に示された天皇の静かなる挑戦

8月8日、天皇陛下が、生前退位に関するお気持ちを述べられた。天皇は政治に関与しないという憲法の制約の中にありながら、生前退位の意向のみならず、天皇制や天皇の役割に踏み込んで、ご自身のお気持ちを国民に伝えられた。

報道されている印象では、国民の多くは、陛下も80を過ぎて健康上の懸念もあり、公務の遂行が難しくなっていることなどから、皇太子にその地位を継承してもらうのもいいのではないか、と受け止め、理解を示しているようだ。

しかし、今回の天皇のお気持ちの表明は、単なる生前退位の是非を越えた意味を有している。

陛下は、次のように述べられた。

「天皇の努めとして何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えてきましたが、同時に事にあたっては、時として人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切なことと考えてきました」

「天皇が象徴であるとともに、国民統合の象徴としての役割を果たすためには、天皇が国民に、天皇という象徴の立場への理解を求めるとともに、天皇もまた自らのありように深く心し、国民に対する理解を深め、常に国民とともにある自覚を自らのうちに育てる必要を感じてきました」

「憲法の下、天皇は国政に関する機能を有しません」

そして、「国事行為や、その象徴としての行為」を縮小することや「摂政をおく」という選択肢は否定された。

重要なのは、全体を通し、天皇の役割は、日本国憲法の下、象徴天皇としての努めを果たすことであり、国民とともにある象徴天皇の務めが常に途切れてはならない、というお気持ちが強調されていたことである。私たち国民が本当に理解しなければならないのは、こちらの方だ。

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2016年06月12日

オバマ大統領広島訪問―核なき世界の欺瞞と希望―

2016年5月27日、オバマ大統領が、現職米大統領として初めて被爆地広島を訪問した。

71年前の原爆投下で犠牲になったすべての人々を追悼する訪問であった。アメリカでは、原爆投下はそれによって戦争終結が早まり、米兵の犠牲者を増やさずに済んだとして正当化されている。したがって、初めから原爆投下への謝罪はないということが前提の上での訪問であった。

この歴史的な訪問は世界のメディアの注目を浴び、大多数の日本人がオバマ大統領を歓迎したと報道されている。被爆者や遺族など、直接原爆の被害を受けた人々の多くも、オバマ大統領に実際に来てもらって自分の目で見て、心で感じてもらいたい、そう願っていたようだ。

献花後に神妙な面持ちで目を閉じ犠牲者を悼むオバマ大統領、核なき世界への決意をあらたにしたスピーチ、被爆者の男性を抱き寄せた場面、被爆者団体代表の坪井直氏と交わした言葉・・・。テレビ画面に映し出された象徴的なシーンには胸を打つものがあった。被爆者の思いに寄り添おうとしたオバマ大統領の行動は、大統領という立場を超えて一人の人として、被爆者の方と互いに心を通わせることができたのだろうと、想像させるに十分であった。

私は、米大統領広島訪問の歴史的意義を否定はしないが、それは決して手放しで喜んだということではない。今回のオバマ大統領の広島訪問に関する所感を以下に3点にまとめた。

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2016年04月21日

インタビューシリーズ第4回「日本の人々は真に自立する覚悟があるのか?」

アメリカの軍事政策、日米同盟、そして平和憲法などをテーマに、日米の専門家・一般市民にインタビューを行い、シリーズで掲載します。様々な立場の人々の意見に耳を傾けることで、この問題に関する知識と理解を深め、自らの安全保障問題を考える際の材料としていただければ幸いです。

* * * * * *


ゲスト: ケン・タイハスト氏(50代)。退役軍人。ブルガリア、サウジアラビア、英国などの空軍基地にて勤務。共和党支持者(ただし、今回の大統領予備選では共和党に支持候補はいない。サンダースに共感)


筆者: 今日は、空軍でのご経験を踏まえていろいろなお話を伺わせていただきます。私の質問は、リベラル・反戦の立場からのものが多くなると思いますが、オープンな議論を楽しみにしています。

タイハスト: 今、リベラル・反戦の立場と言いましたね。戦争に行く立場にある人間が、好戦的だというのは、大きな誤解なんです。我々は決して好戦的ではないんです。だって、現実に犠牲になるのは軍人ですよ。

軍人は常に両極の間に立たされています。つまり、戦争などない方がいいに決まっていて、必ずしも軍事作戦に賛同しているわけではないけれども、より大きな善のために、やるべきことをやらなければならない人間たちいると認識しているということです。そして、自分のやっていることが、大きな善のためになることを願っています(動画参照)。

当然そこには政治的な駆け引きなどが入り込んでくるわけですが、純粋な気持ちとしてはそうなのです。

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2016年04月06日

エスタブリッシュメントが描く国家戦略とアメリカ国民の覚醒

アメリカ大統領予備選が始まって約2ヶ月、共和党ではドナルド・トランプ氏が依然トップを走り、民主党はバーニー・サンダース氏がヒラリー・クリントン氏との差をじわじわと縮めてきている。この予想外の展開に、いったいなぜ、あんな人(トランプ氏)が大統領候補に?サンダース氏ってチャンスあるの?といったよく質問を受ける。


トランプ人気や、トランプ氏と共和党主流派との対立など、すでにニュース解説等もありネット上でも様々な憶測が飛び交っているが、私は「アメリカ国民が、ようやく何かに目覚めアメリカ政治の本質を理解し始めたがゆえの現象ではないだろうか」という思いを抱いている。


今回の記事では、アメリカ国民が何に目覚め始めたのか、アメリカ政治の本質とは何か、いったい今回の大統領予備選で何が起きているのかを、表題にある”エスタブリッシュメント(後に詳述)”をキーワードに、独自に分析してみた。


■巨大資本が操る大統領選


アメリカは民主国家であり、国民に選ばれた大統領が国民のための政治を行う、ということになっている。


しかし、まず始めに言えることは、アメリカ大統領選挙が行われるシステムも、大統領が行う政治も極めて非民主的であるということだ。

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2016年03月27日

インタビューシリーズ第3回「バークレー市議会による辺野古基地反対決議」

 ゲスト: ジョージ・リップマン氏(50代)。カリフォルニア州バークレー市 
“平和と正義”委員会委員長。システム・エンジニア。

■まえがき

20159月、カリフォルニア州バークレー市議会は、沖縄の米軍普天間飛行場の移設に伴う、名護市辺野古の新基地建設に反対する決議を採択した。

決議では、米軍基地が集中している沖縄では長年県民に重い負担がかかっていること、地元住民が移設に反対していること、新基地建設は辺野古沿岸に生息する哺乳類への悪影響があることに言及し、米政府に対し沖縄の民意の尊重と環境の両面を考慮し、法に基づいた措置をとるよう求めている。


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バークレー市議会の決議文のコピー


日本国内では、普天間飛行場の辺野古移設をめぐって、安倍内閣と沖縄県の対立が続く中、沖縄以外の地域に住む日本人は、まるで自分とは無関係であるかのように、沈黙している。辺野古への新基地建設は、当然のことながら、日本全体の安全保障に関わる問題であり、沖縄の周辺住民だけの問題ではない。にもかかわらず、国民の多くにとって、これは、あくまでも沖縄と中央政府の対立なのだ。

日本国民が沈黙している理由は二つある。ひとつは、沖縄に重い負担を押し付け続けるのは気が引けるが、かといって、その肩代わりを自分の住む地域で引き受けようとは思わないから。

もうひとつは、辺野古新基地建設は、日米同盟の軍事戦略の一環であり、日本政府だけの意思で決定することができないからだ。言い換えれば、対米従属の日本はアメリカにNOと言えないと分かっているからだ。

そんな中、何千キロも離れた沖縄で起こっている米軍基地問題を、自らの問題として捉え、環境保護や人権、民主主義の観点から、沖縄の人々の側に立ち、米連邦政府に自らの安全保障政策を見直すよう促す決議をアメリカの自治体が行ったことは、大きな驚きである。

今回、バークレー市議会を辺野古基地建設反対の決議に導いた、同市の“平和と正義” 委員会の委員長であるジョージ・リップマン氏に話を聞くことができた。

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2016年03月15日

インタビューシリーズ第2回 「日本は憲法9条を改正する必要はない!」

アメリカの軍事政策、日米同盟、そして平和憲法などをテーマに、日米の専門家・一般市民にインタビューを行い、シリーズで掲載します。様々な立場の人々の意見に耳を傾けることで、この問題に関する知識と理解を深め、自らの安全保障問題を考える際の材料としていただければ幸いです。

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ゲスト: スティーブン・レスキン氏(30代)。弁護士。ユダヤ系アメリカ人。韓国在住暦がありアジア情勢に詳しい。民主党支持。

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■アジアにおけるアメリカの国益とは?

筆者: 今日は、アメリカの安全保障政策、アジアや中東における軍事問題、日米同盟など、多岐にわたってお話を伺います。

ご存知のように、アメリカは国家予算の20%にあたる6千億ドルを国防に費やし、世界150カ国以上に、合わせて約15万人の軍人を派兵しています。アメリカの国民の中には、「アメリカは世界の警察官ではない。他国への干渉を止めるべきだ。外国から軍を撤退し、軍備を縮小すべきだ」と考える人々も少なからずいます。このような意見について、どう思いますか?

レスキン: ずいぶん大きな質問ですね。アメリカが世界各地に展開していることの是非ですが、ヨーロッパ、中東、アジア、それぞれの地域によって、この答えは異なってきます。

筆者: では、アジア太平洋地域について伺います。

レスキン: そうですね、第二次世界大戦終了以降、米軍は韓国、フィリピン、日本に駐留して来ました。米軍のプレゼンスの意義は、アジア地域に安定をもたらし、民主主義を定着させることができたことにあると思います。

米軍は、朝鮮半島においては南北の軍事的緊張をコントロールし、また旧敵国関係にある日本と中国が軍事的に接近することを防ぎ、安定状態を維持する役割を担ってきました。安定が維持されることで、経済的発展が可能となりました。総じて、アジアにおける米軍プレゼンスはプラスの影響力をもたらしてきたと考えます。

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2016年03月03日

安全保障インタビューシリーズ 第一回 ウェス・ヴァンビューレン氏 

アメリカの安全保障政策、日米同盟関係、そして日本の平和憲法などをテーマに、日米の専門家・一般市民にインタビューを行い、シリーズで掲載します。様々な立場の人々の意見に耳を傾けることで、この問題に関する知識と理解を深め、自らの安全保障問題を考える際の材料としていただければ幸いです。


ウェス・ヴァンビューレン(50代): 中学校教師。作家。英語、数学、社会、科学の全教科を教えるマルチタレント教師。リベラル派。民主党支持。



♦米軍は、経済を循環させるための巨大産業と化している

筆者: 今日は、アメリカの安全保障政策、アジアや中東における軍事戦略、日米同盟など、多岐にわたってお話を伺います。

はじめに、現在米軍は世界150カ国以上に拠点を持っており、合わせて約15万人の米国軍人が派兵されています。アメリカの国民の中には、「アメリカは他国への干渉を止めるべきだ。なぜ、アメリカ国民の税金を使って他国の国民、特に先進国である日本やドイツを保護しなければならないのか。外国から軍を撤退させるべきだ」という人々も少なからずいます。このような意見について、どう思いますか?

ヴァンビューレン: 米軍の世界への派兵が多すぎないかということですが、その通りだと思います。これは、1950年代半ばにまで遡りますが、まさに当時のアイゼンハワー大統領が国民に警告した通りです。いわゆる “軍産複合体(筆者注:Industrial Military Complex 軍需産業に関わる民間企業と軍と政府機関が形成する政治的・経済的・軍事的な勢力の連合体)”の問題です。つまり、軍はビジネスを活性化し、経済を循環させるための巨大産業と化してしまっているのです。軍が進出すれば、武器や施設やインフラなど軍にかかわるあらゆる需要が増しアメリカ経済を押し上げるからです。

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2016年02月20日

Japan’s new Security Laws and criticism on recent security policy changes by Abe administration

Passed in September 2015 by the National Diet of Japan, the new Security Laws changed the interpretation for Article 9 of Japan’s Constitution to allow for Japan to, in essence, maintain an army.  For over sixty years, the Japanese government has interpreted Article 9, which renounces war and prohibits maintenance of armed forces for any purpose other than self-defense. Officially, however, the Security Laws changed this interpretation of the Constitution, allowing Japan to exercise the right to collective self-defense under a very wide range of circumstances.


Listed below are the critique of recent security policy changes, including the highly contentious new security low, by Abe administration.

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