2010年05月03日

高まるオバマ政権への批判−オバマ支持者たちはどこへ?−

今回の記事は、前回の「アメリカに急拡大するティーパーティー運動」に続く記事です。

高まるオバマ政権への批判
ティーパーティー運動は、一言で表現すれば、「保守派の人々や団体が、オバマ政権への批判を旗印に集まり連携し、一大勢力を形成した運動」と言えるだろうと述べました。ティーパーティー運動の拡大に伴い、オバマ政権への批判の世論が次第に高まっていることが、各種世論調査の数字にも表れています。
以下の数字は、2010年4月のCBSテレビによる世論調査の結果です。http://www.cbsnews.com/8301-503544_162-20001629-503544.html

• 大統領支持率・・・・・「支持する」44% 「支持しない」41%
• 医療制度改革に関する評価・・・・・「評価する」34% 「評価しない」は55%
• 経済政策に関する評価・・・・・「評価する」42% 「評価しない」50%
• 失業問題・・・・「不安がある」59% 「不安はない」41%

オバマ大統領の支持率は、最高値だった2009年4月の68%から次第に下降し、2010年4月には44%と最低値となりました。この数字は3月の医療制度改革法案の可決以前の49%より5ポイント下がっており、医療制度改革の実現は支持率の回復につながっていません。「不支持率」は、2009年4月の23%から現在の41%へと増加しています。また、経済状況が依然厳しいと感じている人は84%という数字も出ています。

オバマ支持者たちはどこへ?
このような、オバマ政権に厳しい最近の世論と、ティーパーティー・ブームを目の当たりにするにつけ、まずはじめに私の頭に浮かぶのは、一年半前の大統領選であれだけ熱狂的にオバマ氏を支持し、史上初のアフリカ系大統領の誕生させ歴史的な一歩を踏み出した、あのアメリカ人たちはいったいどこに行ってしまったのだろう、という疑問符です。

「変革」を目指したオバマ氏を支持し、アメリカ全土で繰り広げられた選挙キャンペーンは、まだまだ記憶に新しい出来事のはずではないでしょうか。タウンホール・ミーティングと呼ばれる小さな集会があちらこちらで開かれ、インターネットを通じて集められた小口の献金は莫大な額となって草の根の選挙運動を盛り上げました。今まで選挙運動に参加したことがなかった人、投票所に行ったことすらなかった人々が、オバマ氏を熱狂的に支持し、民主党を大勝利へと導いたのは、ほんの1年半前のことです。

オバマ氏は、イリノイ州選出の上院議員になってからわずか4年という過去に例のない速さで大統領まで上り詰めました。私は、大統領選を終えた後の感想で、「政治・経済・軍事すべてに行き詰まり、どうしようもない閉塞感に覆われた社会が、変革を求めていた。そこへ、突如救世主のように現れたスーパースター・オバマ氏が諸手で受け入れられた。」と書きましたが、オバマ氏は、支持者たちにとってまさに救世主のよう存在だったのです。彼らには、自分たちの手で救世主のオバマ大統領を誕生させたという自負もあったでしょうし、「我らの見方のオバマ大統領なら、低所得者やマイノリティーなど社会的弱者のための政策を実行してくれる」という絶対的な信頼感が膨れ上がっていました。

しかし、大統領選でのオバマ氏勝利が、あまりにも劇的で熱狂的な出来事だったがゆえに、人々は草の根のパワーが政治を変えられるという過度な期待、ある種の幻想を抱いてしまったかもしれません。超スピード出世したのと同じくらいの勢いで、次々と問題を解決し、政策を打ち立ててくれるはずだと、人々は浮れ気味だったように思います。

期待と現実のギャップに気づいた人々
そのスーパースターのオバマ氏も、大統領就任以来の政策の実現では、苦戦を強いられています。実際の政策実現のスピードは、人々が抱いていた非現実的な予想や期待よりはるかに遅く、人々は幻想と現実のギャップに気づき始め、人々のフラストレーションが高まっていきました。

例えば、10年間で9380億ドルの予算を必要とする医療制度改革では、将来に更なる財政赤字をもたらすとして逆風は強く、実現に約一年かかりました。改革法の中身の多くは、適用開始が2014年とあと3年も待たなければなりません。核のない世界を目指すと宣言した2009年4月のプラハでのスピーチから、今年4月のワシントンでの核サミット開催までも約一年かかりました。また、2008年のサブプライム・ローンに始まった金融危機を受けて、その再発を防ぎ、納税者を将来の金融機関救済から守るための金融規制法案の審議も、やっと4月ぎりぎりに上院での採決にこぎつけたところです。教育、エネルギー、環境、国家財政など、順番待ちの政策は山ほどあります。

7870億ドルの景気刺激策にしても、その恩恵はいまだ実感できず、いまだ景気回復には向かっていません。2008年に5.82%だった失業率は、2009年に9.28%、2010年は9.41%と、依然として高い失業率にも人々の不満が反映されています。

信頼を失う連邦政府
PEWによる世論調査(2010年4月18日)では、連邦政府を信頼しているとこたえた有権者は22%と、50年間で最悪でした。人々の不満と怒りの原因は、やはり、最悪の経済状況、そして党派間の抗争にあがいている各議員への不満です。連邦政府がポジティブな影響力を持っていると考えている人の割合は38%、ネガティブな影響力を持っているとしたのは43%でした。97年当時の調査では、それぞれ50%と31%だったのに比べると、連邦政府に対するイメージや信頼はがた落ちの結果となっています。

ティーパーティー運動の中心勢力が共和党支持者たちであることは間違いありませんが、こうした連邦政府への信頼の失墜と、オバマ政権に失望しつつある元オバマ支持者たちのフラストレーションとが、見境なく相まって、ティーパーティー運動に油を注いでいる状況だといえるでしょう。


・・・次回、「オバマの反論と忍耐論」および「返り咲くサラ・ペイリンと中間選挙の攻防」へ続く・・・




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posted by Oceanlove at 01:22| アメリカ政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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