2014年06月16日

スノーデン事件に見る米国民の自由(=Liberty)を護る闘い その(1)

エドワード・スノーデンが、アメリカの国家機密情報を漏えいし、NSA(米国家安全保障局)の情報収集プログラムを告発したのは、ちょうど一年前のことだ。若干29歳の若者の告発によって、911同時多発テロをきっかけに、「テロとの闘い」の名の下にアメリカ政府が始めたこの情報収集プログラムの違法性が白昼のもとに晒されることとなった。

米政府は、スノーデンを指名手配中だが、スノーデンは昨年5月に香港で情報をリークした後、モスクワに飛び、期限付きで亡命を受け入れたロシアに現在も滞在の身だ。スノーデン事件はアメリカのみならず世界各国の諜報機関に衝撃を走らせ、諜報活動のあり方とプライバシーの保護、言論のを自由をめぐり、激しい論争を巻き起こした。スノーデンは「ヒーローか反逆者か」というスキャンダラスな論議もメディアを大きく賑わせている。

これまで、幾度か外国のメディアに登場したスノーデンだが、最近アメリカのテレビ局として初めてNBCニュースのブライアン・ウイリアムスとのインタビューに応じ、去る5月28日、Inside Mind of Edward Snowden という番組で放映された。インタービューで自らの行動の動機、スパイや売国奴と呼ばれることへの反論、愛国心などについて語るスノーデンの声を聴き、改めてアメリカという国の根底を流れる「自由」を重んじる思想と、それを護ろうとするアメリカ国民の力強い闘いを見たように思う。 「Inside Mind of Edward Snowden」 ←こちらをクリックすると、ビデオクリップをご覧になれます。

今回のブログでは、インタビューをかいつまんでご紹介・解説しながら、スノーデン事件の本質について迫ってみたい。

🎨スノーデン事件の概要

スノーデンは2006年、コンピューター・システム・アドミニストレーター(管理者)としてCIAに勤務を始めた。2007年には、スイスのジュネーブに、ネットワークセキュリティーを専門とするCIAのエージェントとして派遣されている。2009年にCIAを辞職した後、NSA(米国家安全保障局)と契約を結ぶDell(Dellは企業や政府機関のコンピューターシステムの管理を請け負っている)に採用された。2013年初めまでコンピューターセキュリティシステムを担当し、NSAの機密情報にアクセスできる立場にいた。ちなみにこの間、日本の米軍横田基地内にあるNSAの施設にも勤務している。

情報漏えいを行う直前の3ヶ月間は、大手経営ITコンサルティング会社ブーズ・アレン・ハミルトンのシステム・アドミニストレーターとして、ハワイを拠点に世界中で行われるインターネットや電話通信のハッキングの新手法を見つけ出す任務についていた。しかし、後に、この仕事に就いたのはNSAが世界中で収集しているデータを集めるためであった、と語っている通り、この時すでにNSAの機密情報の公表と告発を計画し、準備をしていたことになる。

2013年6月5日、英ガーディアン紙とワシントンポスト紙の発信により、NSAの情報漏えいと告発のニュースが世界中を駆け巡る。その4日後、あらかじめ撮影されていたビデオ映像の放映によって、スノーデンは告発の動機と自らの立場とを公の場で明らかにした。

スノーデンの告発によって明らかになったことは以下のようなものである。

         NSAによるプリズム(PRISM:グーグルやヤフなどの加入者情報を利用した情報収集プログラム)、テンポラ(Tempora:NSAとイギリス諜報局が共同で行っている情報収集活動)、およびXKeyscore(あらゆるネット上の最大の情報収集プログラム)の存在。

         米国内で月に30億件、全世界で実に970億件とも言われるインターネット回線と電話回線の傍受が行われ、大手通信会社の加入者の電話番号、端末の番号、通話時間、位置情報と共に、Eメール、チャット、動画、写真やファイルなどが収集されていること。

         通信傍受には、マイクロソフト、ヤフー、グーグル、フェイスブックなどの民間企業が関わり、傍受のための技術提供や情報提供を行っていたこと。

         日本、フランス、トルコなどの同盟諸国を含めた38カ国に対する盗聴やEUに対する情報収集工作などが行われていたこと。

告発にいたった動機について、スノーデンは「国民の名において行われていることが、国民を欺く結果となっていることを国民に知らしめるため」と語っている。言い換えれば、「国防のために行われている情報収集によって、憲法で保障された国民の自由やプライバシー権が侵害されていることを公表するため」ということである。

2013年6月14日、米連邦検察はスノーデンに対し、「政府の所有物の窃盗」と、1917年の諜報活動取締法(スパイ法)に基づく、「国防に関する許可のない外部との交信」および「国家機密情報漏えい罪」の3件で逮捕状を発令した。米露間には犯人引渡し条約が締結されていないため、アメリカ政府はロシアにスノーデンの引渡しを求めることができずにいる。だが、仮に帰国し有罪となれば受刑期間は30年に及ぶと見られている。

スノーデン事件は、政府による大規模な監視・情報収集活動と国家機密、そして、安全保障とプライバシーの保護のバランスについて、アメリカ社会に大きな論争を巻き起こした。

2014年1月の世論調査では、スノーデンの告発と情報漏えいを認めると答えた人は46%、認めないと答えた人は43%である。また、NSAによる情報収集プログラムの存在について、認めると答えた人は39%、認めないと答えた人は54%だった。Poll Results: Snowden

この件に関し、これまでに起こされた2件の裁判の判決は、真っ二つに割れている。

2013年12月、NSAの情報収集プログラムは違憲だとして連邦政府を相手どって起こされた裁判(クレイマン対オバマ)の判決は、電話回線を通じたメタデータの収集は違憲と示された。一方、その10日後、国家情報長官 (Director of National Intelligence)を相手取って起こされた裁判の判決では、プライバシー侵害の懸念は小さくないが、監視がもたらしうる益はその懸念を上回るとして、正反対の判決を下している。

🎨NBCニュースのインタビューより

インタビューは、モスクワにあるホテルの一室で行われた。(以下、青字は会話の要約)

ウイリアムズ: 多くの人々は、あなたは国を大きく傷付けたといっていますが

スノーデン: そうでしょうか。その証拠はありますか?政府に尋ねたり、メディアにも尋ねているのですが、すでに一年が経過しているのに、誰一人として、私の告発によって損害を受けたといういう人はいません。その苦情は果たして信憑性があるでしょうか。質問は妥当だと思いますが、それが本当かどうか確かめるべきです。もし、誰かが損害を追ったとしたら、私自身も知りたいところです。

ウイリアムズは、ロシアとスノーデンの関係について質した。アメリカ政府や米メディアは、スノーデンが身の安全と引き換えに既に公にされた情報以上の国家機密をロシアに伝えているのではないかという危惧を抱いているようだ。

ウイリアムズ: もし、アメリカ政府がロシアの青年を拘束したとしたら、おそらく我々はその青年を味方に付けようとし、青年が知っていることをすべて探り出そうとするでしょう。これまでのあなたとあなたを擁護しているロシア政府との関係は?プーチンに会って話したことは?

スノーデン: 私は、ロシア政府とは一切の関係を持っていません。大統領と会ったこともないし、ロシア政府に支援を受けているわけでもありません。お金ももらっていません。スパイではないのです。ロシアが、何か情報を引き出そうとして私に拷問にかけるようなことをしたり、何かを引き出そうと金を積むような事態を避ける最良の方法は、ロシアに渡る前に、持っている情報をすべて手放すことです(そして実際にそうしたのです)

ウイリアムズ: プーチンが、あなたに接触して何かをつかみ出していないとはまったく信じられませんね。誓ってそれはないと言えるのですか?

スノーデン: ええ。考えてください、私は、機密情報をどう扱うべきかよく知っています。それに、ロシアに着いたときには私は何も持っていなかったんですから、差し出すものもないわけです。

ウイリアムズ: そうですか。ロシアに行く前に手放したというのですね。もし、パソコンをお貸ししたら、その情報にアクセスできますか?

スノーデン: いいえ。

ウイリアムズ: 遠隔操作で、サイバー上でその情報にアクセスはできないんですね。

スノーデン: できません。私のコントールが及ぶものではありません。

スノーデンの回答からは、ロシア政府とスノーデンの関係性は引き出せず、ロシアが、スノーデンを擁護する見返りに何かを得ているのではないかという疑念については、分からずじまいであった。

この事件が発覚した当時、スノーデンの経歴や肩書きについて、さまざまな憶測が飛び交った。オバマ大統領は彼をハッカーと呼び、メディアではシステム・アナリストやCIAの外部契約職員などと呼ばれていた。果たしてスノーデンは、本当に最高度の極秘情報を知りえる立場にいたのだろうか。

ウイリアムズ: あなたは自分自身をどのように名乗るのでしょう?あなたは訓練を受けたスパイなのですか?

スノーデン: (略) 私は、いわゆるスパイとしての訓練を受けています。CIAのスパイとして訓練を受け、外国で、別人として別の職業を持つエージェントとして活動を行っていました。政府は、このような事実を否定し、私のことを下っ端のアナリストだということにしたいようですが、CIAおよびNSAの職員として外国での諜報活動に従事し、またDIA(Defense Intelligence Agency)のアカデミーの教官も務め、これら複数の職場で得たトータルな知識を持っています。私は、世界中の最も危険で困難な状況において国家の情報と国民の安全を守るためのセキュリティーシステム作りに関わっていたのです。ですから、私が下っ端のシステムアドミニスターで何もわかっていないというのは誤解です。

🎨告発の動機

911の同時多発テロが起きたとき、スノーデンはまだ10代の若者だった。彼はちょうどNSAのビルの外にいて、一部始終をみていたという。飛行機がビルを直撃した直後のラジオの声も、当時FBIに勤務していた祖父がペンタゴンにいたことも、鮮明に記憶に残っている。

2004年5月、スノーデンは陸軍に入隊している。911後、イラクの人々を圧制から解放するという大義名分のもとに行ったイラク戦争に賛同した。テロとの戦いを掲げた国家に対して自分なりにできることを探した結果だった。だが、訓練期間中の足の怪我により数ヶ月で中退している。その後、2005年、メリーランド大学上級語学センターのセキュリティー・スペシャリストとしての勤務を経て、CIAに採用されたのは翌年の2006年である。

スノーデン: 私もテロリストの脅威を深刻に受け止めたし、みながそう感じていたと思います。しかし、政府は、その国民的トラウマを逆手に取ったとでもいいましょうか。つまり、アメリカ人が皆苦しみ、そこから必死に立ち上がろうとしてきたこの911事件を利用し、国民の安全が保護されることが証明されていない、しかも、合衆国憲法が保障する国民の自由やプライバシーの権利を脅かす情報収集プログラムを正当化しているのです。これは、極めて不誠実なことではないでしょうか。

ウイリアムズ: しかし、アメリカは攻撃を受けたのです。911によって、アメリカはパールハーバー並みの危機に陥ったのです。なぜ、敵を一掃するために、広くいきわたる網をかけてはならないのですか。私は個人的に隠さなければならないことは何もありません。後ろめたいことがない国民は何も困ることはないのではないですか。

スノーデン: 国家の防衛とはどういうことかというと、いかなる国でもそうですが、他の何よりも国の防衛を最優先するべきと考えられています。しかし、私はアメリカは、その様な国家であるべきではないし、なるべきでもないと考えるのです。もし、私たちが自由を望むのなら、国民は政府による監視の対象になってはならないのです。プライバシーや国民の権利を放棄してはならないのです。私たち国民が国家を成り立たせているのですから。

スノーデン: 私は、時がたち、職場でのポジションがあがっていき、極秘情報へのアクセスができるようになるにつれて、政府が言っていることが真実でないことに気付いたのです。例えば、自分が賛同していたイラク戦争は、在りもしない大量破壊兵器の存在がその根拠でした。国民は誤った情報を与えられていました。それが、単なる諜報活動の誤謬によるものなのかわかりませんが、問題は、十分な世論の合意形成を諮ることなしに、過重な信頼が諜報システムに置かれていることなのです。

ウイリアムズ: 他に告発のやり方があったのではないですか?

スノーデン: 今回の行動に出る前に当然他の方法を試みました。NSAの理事会(Office of General Council)や管轄の部署宛に送った、NSAの権力の用い方に関する疑問を呈した私の文書が記録として残っているはずです。また、職場の上司や同僚などにも、同様の疑問を投げかけました。このような個人のプライバシーの侵害の事実には皆ショックを受けていましたし、これはやりすぎではないのかという声もありました。しかし、そんなことを言ってどうなる、組織から追放されるだけだというのが大方の反応でした。それに対するNSAの回答も、そのような質問は止めるようにというものでした。

🎨プライバシーの侵害について

911の後、アメリカ政府はテロ対策の名の下に、パソコンや携帯電話を通して個人のプライバシーを侵害してきた。スノーデンは、PRISMやXKeystoneと名づけられた情報収集プログラムは、政府による権力の悪用だと批判している。

アンカーのウイリアムズが一定のセキュリティーのかかった携帯を見せ、NSAはこの携帯にどのように関与できるのかという問いを投げかけた。

スノーデンによると、アメリカのみならず、ロシアでも中国でも、それだけの資金力と技術力を持った国の諜報機関であれば、電源が入った瞬間に、その携帯を「所有」することが可能だという。そこからデータを入手したり、写真を撮ったりするのみならず、外部操作によって電源をコントロールすることすら可能だという。ただし、そのような関与は、ターゲットに定めた携帯(テロ行為とか麻薬の密輸など、何らかの犯罪に関わっている疑いのある携帯)に限られているが。

ウイリアムズが食い下がって聞く。

ウイリアムズ: たとえば私がこの携帯で昨日の大リーグの試合結果をチェックしたなどという情報を、いったい誰がなんの役に立てるというのですか?

スノーデン: 政府やハッカーたちにとって、それらは極めて重要な情報なのです。その情報は、あなたという人物について、多くのことを教えてくれます。あなたが英語を話すこと、おそらくアメリカ人であること、スポーツに関心を持っていること、大リーグの試合結果をチェックしたときどこにいたか、出先だったか、自宅だったかなどを知ることができます。

このような情報のアクセスは、あなたが何時に起きて、どこに行き、誰と会っているかというような、日頃の行動パターンを教えてくれます。あなたがどんな活動を行っているか、あるいは、すべきでないこと、例えば違法でないまでも、政府が承認し難い行いを行っていないかといった情報は、例えあなたが潔白で、何の隠し立ての必要のないものあったとしても、誤解さたり誤った取り扱いを受け、あなたに何らかの害をもたらす可能性を含んでいるのです。問題は、その情報の取り扱いについて何の法的規則もなく、コントロールされておらず、危険だということです。

また、スノーデンは政府の情報収集システムが、個人情報にアクセスするのみならず、個人の思考経路にまで入り込むことのできる驚がくの事実について指摘している。

スノーデン: NSAの諜報員たちは、特定の個人のパソコンに入り込み、その人が考えを活字にしていく様子をリアルタイムで観察することができます。つまり、その人があるの文を入力し、しばし止まって考え、バックスペースで消去し、修正して再入力するというようなプロセスの一部始終を手に取るように見ることができるのです。人同士のコミュニケーションをモニタリングするのみならず、人の思考プロセスそのものをモニタリングできるというのは、信じがたい個人の領域への侵害だと言わざるをえません。

ウイリアムズ: そもそも、スパイ活動というのは、いわゆる“汚れ仕事”なのではないですか

スノーデン: 我々諜報活動に携わっている者たちは、スパイ活動が“汚れ仕事”であることは承知しています。我々にとってショッキングなのは、どのようにしてターゲットを選別するのかというプロセスです。そして、そのターゲットがどのように使われるかという部分です。個人のプライバシーへの配慮がまったくないという事実なのです。

その(2)へ続く・・・



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posted by Oceanlove at 08:53| アメリカ政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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